《結論》
率直な結論は二つ。
1)市販で手に入るお薬(飲み薬、塗り薬、目薬、貼り薬等)を、説明書に書いてある通りの用法、用量で一時的に摂取した場合、まず心配はいらないそうです。
そもそも日本で市販されているお薬は、妊婦さんが妊娠に気づかずに摂取してしまう場合も考慮されています。また、妊娠している方が知らずに飲んでしまってすぐに影響がでるような、そんなリスクのあるお薬は、お医者さんの処方なしで販売されることはありません。ですので妊娠してから知らずに市販の風邪薬や胃腸薬を飲んでしまった方、パニックになる必要はありません。ただし、妊娠に気づかれた後に何かしらお薬が必要だと感じた場合は、お医者さんに処方してもらうのが一番安心です
2)持病で薬を常時服用している方、また新たに何か症状が出てお薬が欲しいと思っている方は、必ずお医者さんに相談して下さい。
お薬の中には、胎児に奇形を及ぼす可能性がある等の理由で、妊娠中に投与しないよう奨められている「妊婦禁忌」と指定されているものがあります。ただし、その多くが実際に催奇形性が明らかになったものではなく、「安全性が確立されていない」という理由で「禁忌」扱いになっているそうです。また、妊婦さんの病状によって、多少リスクが考えうるお薬であっても、治療上の有益性が危険を上回ると判断される場合、投与されることもあるそうです。しかし、これらの判断はご自分でできるものではありません。お医者さん、病院によるお薬相談外来、もしくは厚生労働省が行っている「妊娠と薬情報センター」で相談にのってくれますので、必ず専門家に相談するようにして下さい
《妊娠中に注意が必要なお薬》
上記を踏まえた上で、「日本産婦人科医会先天異常委員会委員」が発表している、「妊娠中は是非とも避けて欲しい薬剤」、「妊娠中はかなり慎重に考えたい薬剤」をご紹介します。
「妊娠中は是非とも避けて欲しい薬剤」
効果・目的 | 薬剤名 |
---|---|
抗菌薬・抗ウイルス剤 | リバビリン,キニーネ |
抗高脂血症薬 | プラバスタチン,シンバスタチン |
抗ガン剤 | シクロホスファミド 水和物 |
麻薬 | 麻薬全般 |
睡眠薬 | フルラゼパム,トリアゾラムなど |
抗潰瘍薬 | ミソプロストール |
抗凝固薬 | ワーファリン |
ホルモン剤 | ダナゾール,女性ホルモン |
ワクチン類 | 麻疹ワクチン,おたふくかぜワクチン,風疹ワクチンな |
その他 | エルゴメトリン,ビタミンAなど |
「妊娠中はかなり慎重に考えたい薬剤」
効果・目的 | 薬剤名 |
---|---|
抗菌薬・抗ウイルス剤 | アミノグリコシド系,テトラサイクリン系 |
降圧剤 | βブロッカー,ACE 阻害剤,アンギオテンシン II受容体阻害剤など |
抗けいれん剤 | フェニトイン,フェノバルビタール,バルプロ酸など |
抗うつ剤 | イミプラミンなど |
非ステロイド抗炎症薬 | アセトアミノフェン以外の抗炎症薬 |
向精神薬 | リチウム |
利尿剤 | 利尿剤 |
また、「薬の110番」というお薬情報サイトが、「妊婦禁忌」と指定されているお薬のリストを公表しています。あくまで参考として、ご覧ください。また、同じサイト内で「妊娠と薬」に関する重要なメッセージが書かれていますので、併せてご覧ください。
*「日本産婦人科医会先天異常委員会委員」より
”生まれた赤ちゃんに何らかの異常があった時、その両親は「いったい何が原因だったのだろう?」という疑問に苛まれがちです。もしも妊娠中に薬を飲んだことがあれば,たとえ医学的に否定されてもその薬剤を疑いたくなるのは人の常です。だからこそ不必要な薬の服用は避けるべきですが,逆に既に薬を服用してしまったからと言ってすぐに赤ちゃんを中絶することを考えたり,余計な心配をし過ぎるのもよくありません。また必要な薬剤はきちんと服用することも大切です。薬剤についてどう考えるべきかは,専門家とよく相談してください。”
《妊娠中に服用できるお薬》
「薬の110番」さんのサイトに、妊娠中にも処方されるお薬が掲載されていました。 詳細についてはこちら
上記のリストを元に、市販のお薬でも妊娠中に服用しても安心なものをいくつか探してみました(備考にある注意書きは読んで下さい)。
区分 | 薬品 | 商品名 | 備考 |
---|---|---|---|
カゼ薬 | 葛根湯 | ツムラの葛根湯 | かぜのひき始めの症状、鼻かぜ、頭痛、肩こり、筋肉痛 |
カゼ薬 | 小青竜湯 | ツムラの小青竜湯 | 花粉症・鼻の諸症状に |
解熱 ・消炎 ・鎮痛薬 | アセトアミノフェン | タイレノール、 新エスタックゴールド | 「新エスタックゴールド」にはカフェインが入っているので過剰摂取は避けて下さい |
鎮咳薬 | デキストロメトルファン(メジコン) | エスエスブロン液L、 コンタックせき止めST、 パブロン 50 | 「エスエスブロン液L」にはカフェインが入っているので過剰摂取は避けて下さい |
胃腸薬 | 制酸薬 | サクロン、 太田胃散チュアブル、 パンシロン | 胃腸薬は「つわり」には効きません |
緩下薬(便秘薬) | ピコスルファート、 センナ、 センノシド、 ビサコジル、 パンテチン、 酸化マグネシウム | コーラック、 サトラックス 、 ビオフェルミン、 夜スル!スルーラック | 酷い下痢症状が出ると流産等のリスクがあります。便秘薬を使用したことのない方は使用を避けて下さい。また、大量摂取は避けて下さい。 |
*ただし、一番安心できるのは、お医者さんの処方箋です。一時的な処置以外は、お医者さんに処方してもらいましょう。
《参考》
http://www.marchofdimes.com/pregnancy/drugs-herbs-and-dietary-supplements.aspx
http://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/jigyo/SENTEN/kouhou/kusuri.htmhttp://www.jaog.or.jp/sep2012/JAPANESE/jigyo/SENTEN/kouhou/kusuri.htm
http://www.ncchd.go.jp/kusuri/index.html
http://www.marchofdimes.com/pregnancy/drugs-herbs-and-dietary-supplements.aspx
http://www.okusuri110.com/kinki/ninpukin/ninpukin_22bunrui_list.html
http://www.okusuri110.com/kinki/ninpukin/ninpukin_01-01.html